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モンテッソーリ教育に興味があるけれど、詳しく分からないというママやパパは多いでしょう。モンテッソーリは、専用の教材や教具(おもちゃ)、特別な環境が整っていないと難しいのではないかと考える方も少なくありません。
モンテッソーリ教育は、おうちでも手軽に始められます。ただ、モンテッソーリ教育を正しく理解したうえで実践のポイントを踏まえないと、期待される効果が得られないでしょう。
この記事では、モンテッソーリ教育の概要のほか、0歳の赤ちゃんに実践するポイントやおうちでできる活動、期待できる効果について解説します。おうちでモンテッソーリ教育を取り入れたいママやパパは、ぜひ参考にしてみてくださいね。
0歳から始められるモンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育は、イタリアの医学博士で教育学者でもあるマリア・モンテッソーリによって開発された教育法です。100年以上経った今でも世界中で支持され、110以上の国でモンテッソーリ教育が実践されています。
0歳から現れる敏感期は、生きていくために必要な力に対して現れます。そして、その力は一度獲得すると一生使い続ける力です。この敏感期を理解できると、赤ちゃんの行動の意味が分かり、子育てに役立つでしょう。
ここでは、モンテッソーリ教育の概要を解説します。
- 子どもは生まれながらに「自己教育力」をもっている
- 0~3歳は「吸収する精神」の時期
子どもは生まれながらに「自己教育力」をもっている
モンテッソーリ教育は、子どもは生まれながらに自己教育力をもっており、その力を最大限に発揮できるように大人がサポートするのが基本的な考え方です。
教育というと、大人が教え込むイメージがあるかもしれません。モンテッソーリ教育は、子どもには自ら学ぼうとする力があるので、大人は子どもの主体性を重視しながら、自立した人間に育つことを手助けすることを教育の柱としているのです。
おうちでモンテッソーリ教育を実践するには、前提として子どもの自己教育力を信じることが必要になるでしょう。そうでなければ、子どもが自ら発達し、成長できるような手助けからかけ離れてしまうかもしれません。
0~3歳は「吸収する精神」の時期
モンテッソーリ教育では、0歳から6歳を発達段階の特徴から、前期を0歳から3歳、後期を3歳から6歳と分けて考えています。3歳ごろまでの子どもには、「吸収する精神」という特別の精神形態があるのです。それは、自分から他へ働きかけながら見るもの、聞くもの、触れるものすべてを吸収(獲得)する力を指します。
また、吸収する精神は3歳ごろまで活発に働き、6歳ごろまで残るものの、それ以降は完全に消えてしまいます。そのため、子どもが何に興味をもっているのか、どのような発達段階なのかをみて、言葉や音楽、自然などの環境を整えてあげることが望ましいのです。
0歳の赤ちゃんにモンテッソーリを実践するポイント
一般的に教育には、大人が子どもに対して技術や才能を伸ばすために、方向を示してそちらへ導くという意味合いが含まれています。すでに紹介したように、モンテッソーリ教育では大人は子どもが自ら成長するためのサポートをします。
ただ、サポートすると言ってもどのようにすべきか分かりにくいですよね。以下で、詳しく見ていきましょう。
0歳の赤ちゃんにモンテッソーリを実践するにあたって意識してほしいのは、以下のポイントです。
- 子どもを正しく理解する
- 子どもをじっくりと観察する
- さまざまな経験ができるように環境を整える
1.子どもを正しく理解する
子どもが生まれつきもっている自分自身の力で発達を遂げようとする「自己教育力」を知ることから始めましょう。
生まれて間もない子どもは、何もできないのが当たり前だと考える方は多いでしょう。だからこそ、子どもに指示してできるようにさせるのが親の役割と思い込んでしまいがちです。
子どもを正しく理解するには、この先入観を取り払いましょう。大人主導から子どもが主体となるよう考えることで、初めてモンテッソーリ教育が示す「子どもを正しく理解する」ことにつながります。
2.子どもをじっくりと観察する
モンテッソーリ教育の原点、「Help me do it myself」(ひとりでするのを手伝ってね)に基づいて、子どもをじっくりと観察しましょう。0歳の赤ちゃんは、自分の思いを十分に言葉で表現できません。観察してはじめて、サポートする内容が見えてきます。
子どもを観察するときは、以下の視点をもちましょう。
- どんな動きができるようになったか
- 何に興味をもっているのか
- くり返しやりたがっていることは何か
0歳といっても、月齢ごとに興味の対象が次々と移り変わります。興味を示していたのに、もう見向きもしないことも珍しくありません。その都度、赤ちゃんの気持ちになって観察しましょう。
3.さまざまな経験ができるように環境を整える
子どもを正しく理解し、じっくりと観察できたら、さまざまな経験ができるように環境を整えましょう。
モンテッソーリ教育での子どもを取り巻く環境は、人的環境と物的環境で構成されます。
- 人的環境:教師
- 物的環境:施設・設備、教具・教材
これをおうちに置き換えると、人的環境は親、物的環境は生活の土台である家庭になるでしょう。単に教具や教材を揃えるだけでなく、子どもへのサポートの仕方などを含めた広い意味での環境を整えることが、モンテッソーリ教育には不可欠なのです。
参照:モンテッソーリ教育の核心|長田 勇・立田佐武朗(他5名)
今日からできる!0歳のモンテッソーリは日常生活が教材
0歳の時期はまさに、吸収する精神の時期ですから、五感を使った学びを通して楽しく体を動かす、感覚を刺激する、コミュニケーションを深めることが大切です。
おうちで実践する前に、モンテッソーリ教育の5分野を確認しましょう。それぞれの活動を実施する目的や、将来どのような学びにつながるのかが分かります。
▶モンテッソーリ教育の5分野
項目 |
詳細 |
日常生活の練習 |
目的:さまざまな動きを獲得し、自分の意志通りに体をコントロールする力を身につける 生活の中で必要な動きを活動として、学びに必要な物を扱うことができるようになっていく |
感覚教育 |
目的:五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)による体験から、ものごとを考える方法を獲得する 感覚教育で獲得した観察・識別の力は、言語、算数、文化の知的教育分野に関する学びにつながる |
言語教育 |
目的:言葉を話す、文字を読み・書きするなど、日本語を正確に理解し、言語による表現力を拡げる 語彙が豊かになり、文法や文章構成力の獲得につながる |
算数教育 |
目的:0から10までの数について、抽象的概念を理解する 身の回りにある物の秩序やルールへの気づきにつながる |
文化教育 |
目的:言語教育・算数教育以外の幅広い能力を育む 身近な生き物や植物、音楽、美術などの分野に興味を広げ、自ら調べて学習する力につながる |
参照:乳幼児期(0歳~6歳)のモンテッソーリ教育|モンテッソーリ教育綜合研究所|
ここでは、おうちで今日からでも始められるモンテッソーリ教育の実践を紹介します。
- 【心地よい刺激を受け取る】ベビーマッサージでぬくもりを感じてみよう
- 【物の名前や数え方を覚える】手触りの違う物に触れてみよう
- 【音を聞き分ける土台を作る】音楽や楽器の音色を聞いてみよう
- 【ハイハイができるからだを作る】運動を取り入れよう
- 【自己表現を高める】お絵描きで創作を楽しもう
【心地よい刺激を受け取る】ベビーマッサージでぬくもりを感じてみよう
ベビーマッサージは、0歳の赤ちゃんがママやパパからのぬくもりを感じられる活動のひとつです。体のあちこちにある触覚で、さまざまな情報を取り込むので、パパやママとコミュニケーションし、観察する経験となります。
ベビーマッサージの進め方
用意するもの
進め方 バスタオルの上に、おむつだけをはかせた状態であお向けに寝かせます。おむつを外すと、おしりから背中、足の付け根のマッサージがしやすいです。軽いタッチで、赤ちゃんの体を優しくなでてあげましょう。 微笑みかけたり、歌いかけたりして、楽しい雰囲気をかもしだしながら、赤ちゃんが手のぬくもりを感じている様子を観察します。 |
ベビーマッサージをおこなうときは、以下の点に注意しましょう。
- テレビを消し、赤ちゃんが集中できるよう静かな環境を整える
- 歌いかけやBGMを流すなら、ゆったりとした曲を選ぶ
- 赤ちゃんが寒くないよう、室内の温度に配慮する
- 赤ちゃんを寝かせる場所は、まぶしくないか確認し、照明の真下や光の入る窓付近を避ける
- マッサージをおこなう人は、爪を短く切り、指輪や時計などは外しておく
- 授乳直後や赤ちゃんの空腹時、機嫌の悪いときはマッサージをおこなわない
【物の名前や数え方を覚える】手触りの違う物に触れてみよう
0歳の赤ちゃんは、さまざまな物に興味や関心を示し、触ってはポトンと落とす、物の出し入れをするといったことを試してみます。納得いくまで、繰り返し遊んでいることも少なくありません。手触りの違うものをかごに入れて、いつでも取り出せるようにしましょう。
何度も繰り返し触れることで、徐々に物と数の関係性が分かりはじめ、量(多い・少ない)や数え方を吸収し、数の活動へつながっていきます。
手触りの違う物を使った活動の進め方
用意するもの
進め方 子どもにかごを見せて、目の前に1つずつ並べていきます。取り出す際に、「1・2・3」と何個目になるかを伝えましょう。さらに、物について説明します。「赤い積み木だね、ツルツルしてるね」といった具合です。子どもが取り出した物も、同じように説明してあげましょう。 |
以下の点に注意して、子どもの好奇心に応えてあげましょう。
- 物を口に入れて確かめる場合があるので、水洗いするなど衛生面の配慮が不可欠
- 「ざらざらしてるね」「ふわふわだね」と触感を言葉で伝える
- 子どもが手に持てる大きさから始める(観察しやすい)
- 素材は、布や木、スポンジ、タオル製などバラエティに富んだものを用意する
【音を聞き分ける土台を作る】音楽や楽器の音色を聞いてみよう
モンテッソーリ教育では、3歳を過ぎるころから言葉の教具を使います。この活動の土台となるのが、音を聞き分ける聴覚です。0歳から、さまざまなジャンルの音楽や楽器の音色を聞いて、聴覚を刺激しましょう。
音楽や楽器の音色を聞く活動の進め方
用意するもの
進め方 タイミングに合わせて、流す音楽をピックアップしてまとめておきます。例えば、眠る時間は穏やかな曲、遊ぶ時間は躍動感のある曲など、動きをイメージしやすい音楽を選びましょう。 |
音楽を聞く活動は、以下の点を意識してください。
- 音楽を聞く前に、作曲者、ジャンル、曲の雰囲気といった情報を言葉で伝えましょう。例えば、「モーツァルトの曲だよ」「この曲を聞くと体を動かしたくなるね」
- 幅広いジャンルを聞かせてあげる
- ママやパパの好きな音楽を聞く
- 状況に合った適切な音量にする
【ハイハイができるからだを作る】運動を取り入れよう
床でうつぶせにして、ハイハイするのに必要な腕と首の筋肉を鍛える運動を取り入れましょう。安全に動ける場所を準備して、おなかをつけたハイハイやずりばいから、最終的に両手と両ひざで支えるハイハイができるようにします。ただし、子どもによってはハイハイをしない場合もあることを理解しておいてください。
全身運動の進め方
用意するもの
進め方 子どもを床にうつぶせにして、手が届きそうな位置におもちゃを置きます。おもちゃの存在に気づくまで、おもちゃを振って音を出しましょう。子どもがおもちゃに気づいたら、元の位置にもどし、必要に応じて手を伸ばすサポートをしてあげてください。 |
全身運動は、以下の点に注意しましょう。
- 生後3か月ころ、首がすわってからおこないましょう。
- うつぶせになるには、固い床が向いています。柔らかいと姿勢が不安定になりがちです。
- 長い時間は難しいので、2、3分程度で疲れてしまう前に終了しましょう。
【自己表現を高める】お絵描きで創作を楽しもう
0歳の赤ちゃんのお絵描きでは、何を想定しているのか明確ではありません。以下の点を、あらかじめ理解しておきましょう。
- お絵描きは、点から出発して、線から丸へと発展していくのが一般的です。
- クレヨンを上手く持てず、5本指で握って紙にたたきつけるように描きます。
- 肘を使って手を動かせないので、クレヨンを紙に押し付けて腕を往復させるようになります。まだ、長い線や丸は難しい段階です。
のびのびとお絵描きができる環境づくりをしましょう。
- クレヨンで汚れても気にならない服を着せる
- テーブルや床には新聞紙を敷く
- クレヨンは、誤って口に入れても大丈夫な素材をを選ぶ
参照:0歳からのニューヨーク流 おうちでできるモンテッソーリ教育|タラグリーニー
モンテッソーリ教育|天野珠子
モンテッソーリ教育に期待できる3つの効果
モンテッソーリ教育は、子どもが自ら発達していくのを手伝うことを大人の役割とするのが原則です。子どもは自由が約束された状況で、さまざまな物事に対して、進んで関わることができます。
このような環境のもと育った子どもは、どのような効果が得られるのでしょうか。
モンテッソーリ教育に期待できる効果は、以下の3つです。
- 情緒が安定しやすい
- 集中力を養うことができる
- 自主的に行動できるようになる
1.情緒が安定しやすい
モンテッソーリ教育を取り入れると、情緒が安定しやすい子どもに育ちます。強制されることなく、やりたい活動を自分で選択するのが特徴です。活動に取り組んでいるときも、大人が指図することはありません。そのため、情緒が安定しやすいのです。
また、満足のいくまで取り組んでやり遂げますし、上手くいかない場合でも大人は常にサポートに徹します。そうすることで、成功体験を積み重ねられると同時に、安定した情緒につながるのです。
2.集中力を養うことができる
モンテッソーリ教育では、整えられた環境と大人の適切な働きかけにより、子どもの興味や関心に応じた活動に取り組みます。ひとつの活動に、夢中になって取り組む経験を何度も繰り返すでしょう。そのため、集中力が養われるのはごく自然なことです。
子どもの集中力は、ちょっとしたことで切れやすくなります。自分の学びに集中して取り組むには、興味を引く物があり、過度な干渉を受けない環境が不可欠です。そのうえで、好きなことをとことんやらせてあげれば、深く物事に取り組む集中力が養われるでしょう。
3.自主的に行動できるようになる
モンテッソーリ教育では、自分で選択し工夫して取り組む経験を積み上げていきます。そのため、自分で考えて行動するという主体的に学ぶ態度が育つのです。
自分で選択する経験がなければ、言われたことはきちんとできても、それ以上は推測して展開できないでしょう。言われるまで気づかないし、言われてから動く習慣が身についてしまいます。親の言うとおりに動く子どもは、扱いやすいかもしれません。しかし、長い目でみると自主的に行動できずに、いつも手助けを求めるでしょう。
子どもを見守り、要所でサポートすることで、自分で考えて自主的に行動できるようになるでしょう。
0歳児にモンテッソーリ教育を取り入れて育児を楽しもう
0歳の成長は、子育ての忙しさもあり、あっという間に過ぎてしまうものです。しかし、この時期に、子どもが自らの学びで得た成功体験は、それ以降の成長に大きく影響します。
ママやパパも無理せずに、おうちにあるものを使って、赤ちゃんの成長を手助けしてあげましょう。モンテッソーリ教育を取り入れて、育児をぜひ楽しんでくださいね。
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