ユニセフが調査した世界の「子どもの幸福度」ランキング。日本は第何位?

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「世界一幸せな子どもたちは、どこの国にいるのでしょう?」と聞かれたら、なんと答えますか?ディズニーランドのある国?お金持ちの多い国?それとも自然豊かな国でしょうか。

2025年5月、ユニセフが世界43カ国の子どもたちの幸福度を調べた最新調査「Innocenti Report Card 19」を発表しました。1位はオランダ、2位デンマーク、3位フランス。北欧と西ヨーロッパが上位を占める結果でした。気になる日本はというと、総合14位。ところが、内訳を見るとちょっと驚く事実が見えてきます。身体的健康は1位、でも精神的幸福度は32位という、極端な対照があるのです。今日はこの調査を、世界の子育ての景色をのぞくきっかけとして、一緒に読み解いてみましょう。

世界ランキングの全体像

この調査では、3つの領域(精神的幸福度・身体的健康・スキル)の総合順位が出ています。トップから下位まで、主な国の順位を見ていきましょう。

総合順位 精神的幸福度 身体的健康 スキル
1位 オランダ 1位 4位 11位
2位 デンマーク 上位 上位 上位
3位 フランス 上位 上位 上位
5位 アイルランド 中位 中位 1位
7位 スペイン 中位 中位 中位
12位 オーストリア 中位 20位 中位
14位 日本 32位 1位 12位
25位 ドイツ 中位 中位 34位
韓国(参考) 韓国 34位 中位 4位
米国(参考) 米国(総合除外) 36位 29位 38位
下位3カ国 メキシコ、トルコ、チリ 下位 下位 下位

※出典:UNICEF Innocenti Report Card 19International Investmentの分析(2025年5月)。アメリカとオーストラリアはデータ不足で総合ランキングから除外。一部国の領域別順位はレポート全文と分析記事から編集部にて整理。

この調査では、大きく3つの領域で順位がついています。精神的幸福度(15歳の生活満足度+思春期の自殺率)、身体的健康(子どもの死亡率+肥満率)、スキル(学力+社会的スキル)です。データはOECD PISA 2022、WHO Mortality Database、UN IGME、NCD-RisCといった国際的に信頼できる統計を組み合わせていて、2018年と2022年の比較からコロナ禍の影響も読み取れる作りになっています。

この表を眺めていて気づくのは、「総合順位」だけでは見えてこないストーリーがあるということです。たとえば韓国は学力で世界4位なのに、精神的幸福度は34位。逆に日本は身体的健康で世界1位なのに、精神的幸福度は32位。アメリカに至っては、データが揃っていれば総合では下位に来るだろうという数字です。「お金持ちの国=子どもが幸せ」という単純な構図ではないのが、よく分かります。

下位の常連はメキシコ、トルコ、チリ、米国。チリの子どもの肥満率は57.9%(オランダの17.6%の3倍以上)という衝撃的な数字も出ています。

オランダの子は、なぜ世界一幸せなのか

オランダは2007年の調査以来、UNICEFの子ども幸福度調査でずっと上位を維持してきました。なぜ、これほどまでに子どもが幸せなのか。理由として挙げられるのは、ひとつではありません。

オランダの特徴 具体的なデータ
親の労働時間が短い 週平均29時間(OECDで最短)
パートタイム労働者が多い 労働人口の約半数、女性の75%、男性の26.8%
「Papadag(パパデー)」 父親が週1日、子どもとの時間のために休む文化
家族で朝食を取る習慣 11〜15歳の85%が毎日家族と朝食
子どもが意見を述べる文化 学校・保育施設で「子ども会議」が定期開催
自転車インフラ 9〜10歳から子どもが自分で自転車通学
子どもの肥満率の低さ 17.6%(米国42%、チリ57.9%と比較)

※出典:CNBC「オランダの児童心理学者が語る、オランダの親が決してしないこと」World Economic Forum「なぜオランダのティーンは世界で一番幸せなのか」

オランダの児童心理学者ヴェロニク・ファン・デア・クライ氏は、CNBCのインタビューで興味深いことを語っています。

オランダの父親は、少なくとも週1日「Papaday(パパデー)」を取って、子どもと過ごします。家にいる時間が増えれば、それだけ子どものための活動、遊びの相手、ゆっくり過ごす時間が増えるのです。私たちは、生まれた瞬間から子どもに「Rust, reinheid, regelmaat(ラスト・ライニヘイド・レゲルマート)」、つまり「休息、清潔、規則正しさ」を与えるよう教えられます。

— ヴェロニク・ファン・デア・クライ(オランダの児童・学校心理学者)

気になるのは、オランダの親たちが「子どもの学業成績」よりも「子どもの感情の安定」を気にしているという点です。「うちの子の方がIQが高い」とか「ピアノを習わせている」とかで競争するのではなく、子どもが安心して感情を表現できているかをまず見ているのですね(Expat Republicの記事)。

日本のデータをじっくり読み解く

さて、日本のデータです。総合14位は決して悪くない順位ですが、内訳がとても極端なんです。

領域 日本の順位(43カ国中) 前回(2020年)からの変化
身体的健康 1位 変わらず1位をキープ
スキル(学力・社会性) 12位 27位から大きく改善
精神的幸福度 32位 37位から少し改善

※出典:Japan Times(2025年5月14日)Japan Today(2025年5月15日)

身体的健康が世界1位というのは、日本の医療制度や食生活、衛生環境のすばらしさを物語っています。子どもの死亡率が低く、肥満率も16.3%と先進国で最低水準。これは誇っていい成果です。

一方で、精神的幸福度32位。43カ国中32位ということは、下位3分の1ということです。背景には、思春期の自殺率の高さや、生活満足度の低さがあります。前回37位から少し改善はしたものの、まだまだ順位は低いままです。

でも、ここで興味深い事実があります。今回の調査で、「2018年から2022年にかけて、子どもの生活満足度が実質的に向上した唯一の国は日本だった」とユニセフは報告しているのです(UNICEF公式発表)。他の国はコロナ禍の影響で大きく低下したのに対し、日本だけが向上したのです。

東京都立大学の阿部彩教授(子ども・若者貧困研究センター長)はJapan Timesの取材に対して、改善の理由をこう分析しています。

コロナ禍における学校休校期間が日本では比較的短かったこと、そして子どもがいる家庭の経済状況が改善したことが、生活満足度の向上に影響した可能性があります。

— 阿部彩(東京都立大学・子ども・若者貧困研究センター長)

つまり、皮肉なことに、コロナ禍が「他の国はもっと悪くなったけれど、日本はそれほど悪くならなかった」という相対的な改善をもたらしたのかもしれない、という分析なんです。

世界全体で見える、心配な傾向

このレポートが警鐘を鳴らしているのは、日本だけの話ではありません。43カ国全体で見ると、いくつかの心配な傾向が浮かび上がってきます。

  • 43カ国合計で、15歳の約半数(800万人)が、機能的な読み書きや計算が十分にできないレベル(基礎的な文章を理解できない状態)
  • コロナ禍による学習の遅れは平均7か月〜1年
  • 15歳の生活満足度が、32カ国中14カ国で大幅に低下
  • 女子の生活満足度の低下幅が、ほぼすべての国で男子より大きい
  • 43カ国中14カ国で、子どもの肥満が大幅に増加

UNICEF Innocenti事務局長のボー・ヴィクトル・ニランド氏は、こう警告しています。

パンデミック以前から、子どもたちは多方面で苦しんでおり、たとえ豊かな国であっても十分なサポートを受けられていませんでした。今、経済的不確実性が高まる中、各国は子どもたちの教育、健康、ウェルビーイングを優先させる必要があります。それは子どもたち自身の生涯の幸せのためであり、同時に私たちの社会の経済的な安定のためでもあるのです。

— ボー・ヴィクトル・ニランド(UNICEF Innocenti事務局長)

このランキングから、私たちは何を受け取れるか

「順位が低いから日本はだめだ」という話で終わらせてしまうのは、ちょっともったいないなと思います。むしろ、このランキングは「子どもの幸福度って、何で決まるんだろう?」という問いを私たちに投げかけているのかもしれません。

日本は身体的健康1位、学力でも改善傾向。これは紛れもなく日本社会の強みです。一方で、精神的幸福度の低さは、長く課題として残されてきました。日本の子どもたちが「学業はできても、自分の人生にあまり満足していない」という構造を、どう変えていけるのか。

オランダのデータを見ていて気づくのは、「親が忙しすぎないこと」「子どもの意見が尊重されること」「家族で食事をする習慣」といった、ある意味で当たり前のことの積み重ねなんですよね。すごい教育プログラムでも、特殊な早期教育でもない。

もちろん、オランダの全てを真似することはできません。労働環境も、文化も、社会保障も違います。でも、できる範囲のことはあるかもしれない。

  • 家族で朝食または夕食を食べる時間を週に何回か作る
  • 子どもの意見を、否定せず最後まで聞いてみる
  • 「学業の成績」と同じくらい、「子どもの感情」に注意を向ける
  • 休日は何かを「させる」より、ゆっくり過ごすことを大切にする
  • 親自身が忙しすぎていないか、たまに立ち止まって見直してみる

世界を見渡すと、子どもの幸せの作り方には、いろんなアプローチがあるんだなと感じます。「世界一」を目指す必要はないけれど、世界に目を向けることで、自分たちの子育てに新しいヒントが見つかるかもしれません。

よくある質問

Q. なぜアメリカは順位に入っていないのですか?

A. UNICEFの公式発表によると、アメリカとオーストラリアは必要なデータが揃わなかったため、今回の総合ランキングからは除外されています。ただし個別の指標では集計されていて、たとえば米国の子どもの肥満率は42%(オランダの約2.5倍)で、精神的幸福度の単独データでは36位という結果でした。

Q. 日本の精神的幸福度が低いのは、どんな理由が考えられますか?

A. UNICEFのデータが直接的に分析しているわけではないので推測になりますが、思春期の自殺率の高さが大きく影響しています。学校でのいじめ、受験ストレス、将来への不安、家族とのコミュニケーション不足など、複数の要因が指摘されてきました。日本の子どもの自殺は、以前から先進国で高い水準にあります。

Q. 「Papadag(パパデー)」って、日本でも実現できますか?

A. オランダのPapadagは、政府が1996年にパートタイム労働者の権利を正規労働者と同等にする法律を作ったことで、社会全体に広がった文化です。日本でこのまま導入するのは難しいですが、最近は週休3日制を導入する企業も少しずつ出てきています。「父親が週1日は子どもとの時間を作る」というアイデア自体は、フレキシブルな働き方が可能な家庭から個人レベルで始められるかもしれません。

参考にした情報源

この記事を書くにあたって、英語の以下の情報源を参考にしました。原典のデータをもっと詳しく見たい方は、ぜひ元の資料もチェックしてみてください。

PULMO編集部

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