サウジアラビアが12年で見つけたギフテッド18万人。世界と比べてどれくらい「すごい」のか

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「うちの子、もしかしてギフテッドかも?」と思ったとき、日本ではなかなか相談先が見つからなかったり、検査の予約が数か月待ちだったり…と困ることが多いですよね。でも、世界に目を向けてみると、国を挙げてギフテッドの子どもたちを見つけて育てている国があるんです。今回ご紹介するのは、産油国サウジアラビアのお話です。

サウジアラビアは2011年から、国家的なテストで51万8千人もの子どもたちを測定し、そのうち18万7千人を「ギフテッド」として認定してきました。たった12年でこの規模です。日本ではまだ実証研究の段階なので、その差にちょっと驚いてしまいます。今日は、世界のギフテッド事情を知る一例として、サウジの取り組みをのぞいてみましょう。

12年で18万人。世界と比べてどれくらい「すごい」のか

ギフテッドの世界比較

「18万7千人」と言われても、ピンと来ない方も多いかもしれません。同じように国レベルでギフテッドを見つけている他の国と比べてみると、その規模の大きさが分かります。下の表をご覧ください。

国・プログラム名 人口 制度開始 累計識別者数
サウジアラビア(Mawhiba) 3,530万人 2011年(12年経過) 18.7万人
米国 CTY(ジョンズ・ホプキンス大学) 3.3億人 1979年(45年経過) 約16.5万人
シンガポール GEP 561万人 1984年(40年経過) 約1.6万人
日本 1.24億人 2023年〜実証研究 認定制度なし

※出典:各国の公開資料より編集部試算

ちょっと驚きませんか?アメリカのCTYは世界で最も古いギフテッド識別プログラムなのですが、45年かけて積み上げた約16.5万人という規模を、サウジは人口10分の1の国で、3分の1以下の期間で追い越してしまったんです。シンガポールと比べると、人口で補正してもサウジは約6倍のペースで子どもたちを見つけ続けていることになります。

もちろん、各国で識別の基準は違うので単純比較はできません。それでも、サウジの「速さ」と「規模」が突出していることは伝わってくるかと思います。

なぜ国ぐるみでここまでやるの?

サウジがここまで本気な理由は、ひとつの国家戦略にあります。2016年にムハンマド皇太子が発表した「Saudi Vision 2030(サウジ・ビジョン2030)」という改革プランです。

これは「石油に頼りすぎている経済を変えていこう」という大きな方針で、教育分野には国家予算の約25%が配分されています。なかでも才能発掘は中心的な柱に位置づけられました。「子どもの才能こそ、石油の次に来る国の財産」と考えているわけですね。

運営しているのは、王立財団の「Mawhiba(マウヒバ)」という非営利団体です。1999年に設立されて、教育省と国立評価センターの3者でタッグを組んで動いています。スポンサーには、世界最大の石油会社サウジアラムコや石油化学大手のSABICがついていて、2020年にはユニセフ、2024年にはユネスコとも正式に提携しました(UNICEF Gulfの発表)。国際機関も認める規模感ですね。

運営している人たちは、どんな思いで動いているのか

Mawhibaの前事務総長サウード・アル・マサミ氏が、ユニセフとの提携を発表したときに語った言葉が印象的です。

Mawhibaは、世界中の若者のギフテッドと創造性を育てることを目指しています。この提携は、科学と技術における質の高い生涯学習を育み、次世代のイノベーティブ・リーダーたちの成功物語を共に作ることにつながります。

— サウード・アル・マサミ 前Mawhiba事務総長(2020年11月)

もうひとり、国立評価センターのアブドラ・アル・カティ執行役員の発言もご紹介します。Arab Newsのインタビューでこう話しています。

才能ある将来有望な生徒と、彼らの成果は、私たちの社会に反映されるべきです。それが生徒たちの間に、健全な競争心を育てるのです。

— アブドラ・アル・カティ 国立評価センター執行役員

個人の才能を「その子だけのもの」ではなく「社会全体の財産」として捉える姿勢が、はっきり表れていますよね。日本の感覚とはちょっと違うかもしれません。

日本との違いは「予算」より「考え方」

「お金をかければ日本でもできるのでは?」と思いたくなるところですが、実はもっと根っこの部分で考え方が違うのです。

日本も2023年から文部科学省が「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業」をスタートしていて、初年度予算は7,700万円でした。少しずつ規模を広げているところです。サウジと比べると確かに桁違いですが、お金の話だけでは見えない違いがあります。

  サウジアラビア 日本
才能の捉え方 「国家資源」 「特異な才能」=配慮の対象
主な目的 国際舞台で活躍する人材の育成 学校で困っている子への包摂
使う言葉 Gifted(ギフテッド) 「特異な才能のある児童生徒」
背景にある思想 個人の才能=社会の財産 戦後教育の平等主義

日本は「ギフテッド」という言葉自体を文科省が避けていて、代わりに「特異な才能のある児童生徒」という表現を使っています。力点は「才能があるからこそ生じる困難」への配慮に置かれているんです。一方のサウジは、才能を国民みんなの財産として扱うことに、なんの躊躇もありません。

これはどちらが正しいという話ではなくて、国として「才能」をどう捉えるかの根本が、もう全然違うのだなと感じます。

サウジモデル、いいことばかり?

ここまで読むと「サウジすごい!」と思えてしまいますが、もちろん課題もあります。フェアにお伝えしておきますね。

2023年に学術誌Cogent Educationが発表した湾岸諸国のギフテッド教育を評価するレビュー論文では、こんな指摘があります。

  • 公立学校のカリキュラムにおける宗教教育とのバランス
  • 地方在住の子どもたちのアクセスの偏り
  • 長期的な成果を検証するデータがまだ足りない

米国のSMPYというプログラムは、50年以上かけてギフテッドの子どもたちのその後を追跡する大規模研究を続けています。サウジはまだ12年なので、こうした「長く追いかけて検証する」というところでは、これからの段階なんです。

つまりサウジモデルは「速さと規模」では世界を圧倒している一方で、「長期的な検証」では米国の歴史にはまだ追いついていない。手放しで賞賛するわけにはいかない、というのが現実的な見方かなと思います。

日本に住む私たちが受け取れるヒント

サウジのお話は、日本から見ると遠い国の出来事に思えるかもしれません。でも、いくつか感じ取れるヒントはあると思っています。

ひとつは、日本ではまだ公的な識別の仕組みも、体系的な支援メニューも整いきっていないということ。今のところは民間サービスや家庭の工夫で対応していくしかないのが現実です。検査を受けたい場合の選択肢は、こんな感じになります。

受ける場所 費用の目安 待ち時間
民間機関(臨床心理士など) 1万〜2万円 比較的すぐ
医療機関(保険適用の場合) 3,000円前後 3〜6か月待ちも
公的機関(発達障害者支援センター等) 無料〜低額 3〜6か月待ち

もうひとつは、日本の「困難への配慮」という視点も、悪いことばかりではないということ。ギフテッドであり、かつ発達障害も併せ持つ「2E(Twice-Exceptional、トゥーイー)」という子どもたちにとって、欧米の「才能育成オンリー」モデルよりも、日本の包摂的なアプローチの方が合うこともあります。両方の良いところを組み合わせる余地は、まだまだ残されているのかなと思います。

世界に目を向けると、子育ての選択肢や考え方は本当に多様です。サウジの18.7万人という数字を眺めながら、「うちの子の才能を、私たちはどう見ていきたいかな?」と少しだけ立ち止まって考えてみるのも、いい時間かもしれませんね。

よくある質問

Q. このサウジモデル、日本でもそのまま導入できないんですか?

A. 残念ながら、そのまま持ってくるのは難しそうです。サウジの制度は王室の強いリーダーシップと、巨額の国家予算がベースになっています。日本の教育行政は学年主義と平等主義が根強くて、「全児童をテストして上位を選抜する」というやり方そのものが社会的に受け入れられにくい面があります。ただ、民間主導でパイロット的にやってみる余地はありそうです。

Q. Mawhibaの成果って、本当にあるんですか?

A. はい、短期的な成果ははっきり見えています。Saudi Press Agencyの発表によれば、国際オリンピックでの通算690以上のメダル・表彰、海外トップ大学への進学者輩出など、目に見える形で結果が出ています。ただ、長期的な研究はまだこれからの段階です。

Q. 日本でギフテッド検査を受けたいときは、どうすればいい?

A. 国の認定制度はまだないので、一般的にはWISC-V(5〜16歳向けの知能検査)を、臨床心理士のいる民間機関や医療機関で受けることになります。費用は民間で1万〜2万円、医療保険が使える場合は3,000円前後です。公的機関は予約が3〜6か月待ちになることが多いので、急ぎたい場合は民間も視野に入れるといいかもしれません。

参考にした情報源

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