港区で住まいを探すとき、「どの小学校の学区に住むか」は子どもの教育環境だけでなく、不動産の資産価値にも直結します。しかし、学区ごとの地価を横並びで比較した情報はこれまでほとんど公開されていませんでした。
本記事では、国土交通省が毎年発表する「地価公示」の個別地点データ(住宅地30地点・11年分)を、港区教育委員会の通学区域表に基づいて小学校学区ごとに集計しました。学区別の地価ランキング、11年間の上昇トレンド、そして中学受験率や塾環境との関係まで、一次データに基づいて読み解きます。
港区の住宅地価は11年で2倍に
2016年(平成28年)に平均151万円/㎡だった港区の住宅地は、2026年(令和8年)には平均301万円/㎡に達しました。坪単価に換算すると約996万円。11年間でほぼ2倍に上昇しています。
11年間の値動きには3つのフェーズがあります。
- 2016〜2020年(安定上昇期) — 年+5〜6%で堅調に推移。低金利と都心回帰が追い風に
- 2021〜2022年(コロナ停滞期) — 上昇率が+1.0〜2.3%に急減速。ただし下落には至らず底堅さを維持
- 2023年〜現在(急加速期) — +6.9%→+12.2%→+16.9%と加速。海外マネーの流入、タワマン需要、相続対策としての都心不動産購入が重なった結果
出典:国土交通省「地価公示」(東京都財務局発表)平成28年〜令和8年版より筆者集計。港区内の住宅地標準地全地点の単純平均値。
学区別 地価ランキング(2026年最新)
港区内の全19小学校のうち、地価公示の住宅地標準地が存在する11学区について、学区ごとの平均㎡単価を算出しました。
| 順位 | 学区(小学校) | 平均㎡単価 | 平均坪単価 | 前年比 | 地点数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 赤坂小学校 | 404万円 | 1,334万円 | +18.1% | 4 |
| 2 | 本村小学校 | 379万円 | 1,254万円 | +16.8% | 2 |
| 3 | 青南小学校 | 326万円 | 1,078万円 | +16.7% | 3 |
| 4 | 南山小学校 | 295万円 | 975万円 | +16.8% | 4 |
| 5 | 芝浦小学校 | 274万円 | 906万円 | +20.2% | 1 |
| 6 | 赤羽小学校 | 268万円 | 886万円 | +16.7% | 2 |
| 7 | 白金小学校 | 264万円 | 874万円 | +15.2% | 5 |
| 8 | 高輪台小学校 | 240万円 | 794万円 | +15.8% | 4 |
| 9 | 港南小学校 | 226万円 | 747万円 | +22.2% | 1 |
| 10 | 東町小学校 | 218万円 | 721万円 | +16.2% | 3 |
| 11 | 笄小学校 | 215万円 | 711万円 | +15.6% | 1 |
ランキングの読み方について、いくつか補足します。
- 赤坂小学校学区が1位になった最大の要因は、赤坂1丁目(溜池山王エリア)に711万円/㎡という突出した高値地点があること。ただし同じ赤坂学区でも赤坂4丁目は191万円/㎡で、学区内の最高値と最低値で3.7倍の差があります
- 「名門校」として知られる青南小学校の学区は326万円/㎡で3位。南青山2〜4丁目は282〜377万円/㎡のレンジに収まり、学区内のばらつきが小さいのが特徴です
- 白金小学校学区は白金台3丁目に548万円/㎡の高値地点がある一方、白金台4丁目は152万円/㎡。マンション用地と戸建住宅地で評価が大きく異なるため、平均では7位に落ち着いています
上昇率ランキング — 10年で伸びた学区はどこか
現時点の㎡単価の高さと、「この10年でどれだけ伸びたか」はまったく別の話です。2016年→2026年の上昇率で並べ替えると、異なる景色が見えてきます。
| 順位 | 学区 | 2016年 | 2026年 | 上昇率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 港南小学校 | 86万円 | 226万円 | +162% |
| 2 | 白金小学校 | 105万円 | 264万円 | +153% |
| 3 | 芝浦小学校 | 111万円 | 274万円 | +147% |
| 4 | 本村小学校 | 168万円 | 379万円 | +126% |
| 5 | 高輪台小学校 | 111万円 | 240万円 | +117% |
| 6 | 赤坂小学校 | 206万円 | 404万円 | +96% |
| 7 | 東町小学校 | 118万円 | 218万円 | +85% |
| 8 | 赤羽小学校 | 146万円 | 268万円 | +84% |
| 9 | 青南小学校 | 180万円 | 326万円 | +81% |
| 10 | 笄小学校 | 119万円 | 215万円 | +81% |
| 11 | 南山小学校 | 166万円 | 295万円 | +78% |
上昇率の高い学区に共通するパターンがあります。
- 港南・芝浦・高輪台は、品川駅や田町駅周辺の大規模再開発とタワーマンション建設が地価を押し上げた「再開発恩恵型」
- 白金・本村は、もともとの住環境の良さに加えてマンション需要が急増した「ブランド再評価型」
- 逆に南山(元麻布・六本木)・青南(南青山)・笄(西麻布)は上昇率80%前後と相対的に控えめ。伝統的高級住宅地の「安定」を反映
つまり「もともと高かったエリア」よりも「港区内で相対的に割安だったエリア」のほうが大きく伸びたという構図です。港区内の地価格差は、この11年間で縮まる方向に動いています。
学区別の11年推移 — 「急騰した学区」と「安定した学区」
この対比をグラフで可視化します。上昇率トップ3とボトム3を並べると、カーブの角度の違いが一目でわかります。
上昇率上位3学区:港南・白金・芝浦
2016年時点では㎡86〜111万円と、港区の中では「手が届きやすい」価格帯でした。それが11年で2.5倍前後にまで上昇しています。
出典:国土交通省「地価公示」(東京都財務局発表)各年版より筆者集計
3学区に共通するポイントは以下のとおりです。
- コロナ期(2020〜2022年)でも下落せず、緩やかな上昇を維持した
- 2024年以降に急加速。芝浦・港南は田町・品川駅周辺の再開発恩恵を直接受けている
- 高輪ゲートウェイ駅の開業(2020年)以降、湾岸・再開発エリアへの注目度が一段と高まった
白金学区は再開発型ではなく、もともとの住環境に加えて白金台3丁目のタワーマンション周辺(548万円/㎡)が平均を引き上げている構造です。白金台2丁目の178万円/㎡と比べると学区内でも3倍以上の差があり、マンションと戸建てで地価水準が大きく異なるエリアです。
上昇率下位3学区:南山・笄・青南
一方、上昇率ランキングの下位に位置する南山・笄・青南の3学区。これらは元麻布・六本木・南青山・西麻布といった「もともと高い」伝統的高級住宅地です。
出典:国土交通省「地価公示」各年版より筆者集計
上位3学区のグラフと比べると、カーブの角度が明らかに緩やかです。コロナ期はほぼ横ばいに近い動きで、上位3学区が同時期にも着実に伸びていたのとは対照的です。
ただし「伸びが緩やか」とはいえ、絶対値では以下のとおりです。
- 青南小学区:326万円/㎡(+81%) — 上昇率は9位でも、㎡単価では堂々の3位
- 南山小学区:295万円/㎡(+78%) — 上昇率は最下位でも㎡単価は4位
- 笄小学区:215万円/㎡(+81%) — 地点が1つしかないため数字のブレに注意
「もともと高かったがゆえに、率の計算上は目立たない」という構造です。投資目線なら上昇率の高い港南・白金を、住環境の安定性を重視するなら青南・南山を選ぶ、という判断軸が見えてきます。
全30地点の個別データ
ランキングの根拠となった全30地点のデータを、㎡単価の高い順に掲載します。お住まい探しの際に、気になるエリアの相場の目安としてご活用ください。
| 地点 | 学区 | 所在地 | ㎡単価 | 前年比 | 最寄駅 |
|---|---|---|---|---|---|
| 港区-4 | 赤坂 | 赤坂1丁目 | 711万円 | +20.5% | 溜池山王 420m |
| 港区-29 | 白金 | 白金台3丁目 | 548万円 | +16.6% | 白金台 180m |
| 港区-16 | 笄 | 南麻布4丁目 | 499万円 | +15.5% | 広尾 650m |
| 港区-28 | 本村 | 南麻布1丁目 | 476万円 | +17.0% | 麻布十番 350m |
| 港区-1 | 赤坂 | 赤坂6丁目 | 408万円 | +20.4% | 六本木一丁目 350m |
| 港区-3 | 青南 | 南青山4丁目 | 377万円 | +17.1% | 表参道 360m |
| 港区-13 | 南山 | 元麻布2丁目 | 369万円 | +16.0% | 広尾 700m |
| 港区-30 | 高輪台 | 高輪3丁目 | 348万円 | +16.8% | 高輪GW 600m |
| 港区-2 | 南山 | 六本木5丁目 | 329万円 | +17.1% | 麻布十番 400m |
| 港区-18 | 青南 | 南青山2丁目 | 319万円 | +16.0% | 青山一丁目 230m |
| 港区-11 | 赤坂 | 赤坂8丁目 | 304万円 | +16.9% | 青山一丁目 320m |
| 港区-23 | 赤羽 | 三田2丁目 | 298万円 | +18.3% | 赤羽橋 560m |
| 港区-7 | 本村 | 南麻布5丁目 | 297万円 | +16.5% | 広尾 250m |
| 港区-21 | 青南 | 南青山4丁目 | 282万円 | +17.0% | 外苑前 600m |
| 港区-14 | 南山 | 元麻布3丁目 | 276万円 | +16.9% | 六本木 650m |
| 港区-17 | 芝浦 | 芝浦2丁目 | 274万円 | +20.2% | 田町 760m |
| 港区-22 | 本村 | 南麻布1丁目 | 245万円 | +15.0% | 白金高輪 760m |
| 港区-10 | 赤羽 | 三田2丁目 | 238万円 | +15.0% | 麻布十番 700m |
| 港区-20 | 白金 | 白金3丁目 | 229万円 | +15.1% | 白金高輪 580m |
| 港区-19 | 港南 | 港南3丁目 | 226万円 | +22.2% | 品川 1100m |
| 港区-26 | 東町 | 東麻布2丁目 | 218万円 | +15.3% | 赤羽橋 300m |
| 港区-9 | 高輪台 | 高輪1丁目 | 216万円 | +14.9% | 白金高輪 250m |
| 港区-5 | 笄 | 西麻布1丁目 | 215万円 | +15.6% | 六本木 430m |
| 港区-27 | 白金 | 白金4丁目 | 215万円 | +15.0% | 白金台 310m |
| 港区-25 | 南山 | 六本木3丁目 | 206万円 | +17.0% | 六本木 350m |
| 港区-12 | 高輪台 | 高輪4丁目 | 202万円 | +15.4% | 品川 620m |
| 港区-24 | 高輪台 | 高輪2丁目 | 195万円 | +16.1% | 泉岳寺 270m |
| 港区-15 | 赤坂 | 赤坂4丁目 | 191万円 | +14.4% | 赤坂 550m |
| 港区-8 | 白金 | 白金台2丁目 | 178万円 | +14.1% | 高輪台 320m |
| 港区-6 | 白金 | 白金台4丁目 | 152万円 | +15.2% | 白金台 180m |
出典:国土交通省「令和8年地価公示」東京都財務局発表データより筆者集計。学区は港区教育委員会の通学区域表に基づきマッピング。
地価・中学受験率・塾環境のクロス分析
ここまで地価のデータを見てきましたが、港区で住まいを探す子育て世帯にとって地価だけでは判断できません。中学受験率や塾へのアクセスも含めて、学区ごとの「教育環境としての総合力」を考えてみます。
港区の中学受験率は23区3位の41.9%
東京都教育委員会「令和7年度公立学校統計調査報告書」によると、港区の公立小学校から都内私立中学校への進学率は41.9%で、文京区(49.5%)、千代田区(43.8%)に次ぐ23区中3位です。区内の約4割の小学生が中学受験を経て私立中学に進学しています。
小学校別の中学受験率は公表されていませんが、港区の学校選択希望制データ(令和8年4月入学分)から「学区外からの入学希望者数」を見ると、学校ごとの人気度がわかります。
| 順位 | 小学校 | 学区外希望者 | 抽選 | 地価ランク |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 白金小 | 59人 | なし | 7位 |
| 2 | 芝浜小 | 56人 | 抽選あり | — |
| 3 | 赤羽小 | 55人 | なし | 6位 |
| 4 | 青南小 | 48人 | なし | 3位 |
| 5 | 笄小 | 47人 | 抽選あり | 11位 |
地価ランキングと照らし合わせると、面白い「ズレ」が見えます。
- 地価ランキング1位の赤坂小は、学校選択の人気度では上位に入っていない
- 逆に地価7位の白金小が学校選択では1位。地価11位の笄小も5位に入り抽選が発生
- つまり「地価の高さ」と「学校の人気」は必ずしも一致しない。教育内容、学校の評判、通学の利便性、周辺の塾環境が複合的に作用していると考えられます
港区内の中学受験 四大塾マップ
中学受験の四大塾(SAPIX・早稲田アカデミー・四谷大塚・日能研)の港区内の教室配置も、住まい選びに影響する重要な要素です。
| 塾名 | 港区内の教室 | 近くの学区 |
|---|---|---|
| SAPIX | 白金高輪校 / 東京校(東麻布・赤羽橋駅徒歩1分)/ 麻布十番校 | 白金・東町・南山・赤羽 |
| 早稲田アカデミー | 白金高輪校 | 白金・高輪台 |
| 四谷大塚 | なし(近隣は渋谷校・品川校) | — |
| 日能研 | なし(近隣は目黒校・恵比寿校) | — |
SAPIXが港区内に3教室を構えているのは、最難関校を目指す層がこのエリアに集中していることの裏返しです。注目すべきポイントは以下の3つです。
- SAPIX東京校は赤羽橋駅から徒歩1分の東麻布エリア。東町小・南山小・赤羽小の各学区から通いやすく、港区の中学受験のハブ的存在
- 白金高輪エリアはSAPIXと早稲田アカデミーの両方が揃う。白金小・高輪台小の学区にとって塾選びの選択肢が最も豊富
- 港南小学校学区(品川駅周辺)は港区内の大手塾が遠い。地価上昇率ではトップでも、塾アクセスの面ではまだ発展途上
「地価」「学校人気」「塾アクセス」の三拍子が揃うエリア
3つの指標を重ねてみると、白金〜白金高輪エリアと麻布十番〜東麻布エリアが、地価・学校人気・塾アクセスの三拍子が揃った中学受験に最も有利な立地と言えそうです。
赤坂エリアは地価こそ最も高いものの、近隣の大手塾教室は渋谷区側(青山一丁目・表参道方面)に依存する形になります。港南エリアは地価上昇率こそ圧倒的ですが、塾までの通塾距離が課題です。
不動産購入の際に子どもの中学受験を考慮するのであれば、学区別の地価だけでなく、通いたい塾の教室がどこにあるかまで見ておくと、住み始めてからのミスマッチを防ぎやすくなります。
本記事の地価データは国土交通省「地価公示」(東京都財務局発表・平成28年〜令和8年版)に基づいています。港区内の住宅地標準地全地点(30地点)を港区教育委員会の通学区域表に基づき小学校学区に振り分け、学区ごとの平均㎡単価を算出しました。芝浦小・港南小・笄小の各学区は1地点のみのため、平均値の信頼性は複数地点を持つ学区と比べて低くなります。地価公示は毎年1月1日時点の標準的な土地価格であり、実勢価格は公示価格の1.1〜1.2倍程度が目安です。中学受験率は東京都教育委員会「公立学校統計調査報告書」、学校選択希望制データは港区公式サイト公表値を使用しています。
